腕を持ち上げようとすると外れそうな感覚がある

腕を垂らした状態から持ち上げようとすると外れそうな感覚と痛みが起こると相談を受けました。
考えられる要因を考察しました。

1. 肩関節の不安定性(関節弛緩やルーズショルダー)

▶ 発生メカニズム

肩関節は関節窩(肩甲骨)に対して上腕骨頭が浅くはまり、周囲の筋肉や靭帯で支えられています。

肩関節が緩い(ルーズショルダー)場合、腕を動かした際に上腕骨頭が関節窩からずれそうになることで、「外れそうな感覚」が生じると考えます。

特に腕組み動作では、肩が内転・内旋するため、前方の関節包や靭帯が伸ばされ、不安定性が増します。

🔹 関連する状態

  • 反復性肩関節脱臼・亜脱臼
  • 関節弛緩(生まれつき靭帯が緩い人や、スポーツ・怪我で肩を痛めた人)

2. 上腕二頭筋長頭腱炎

▶ 発生メカニズム

上腕二頭筋の長頭腱は肩の前方を通り、関節の安定性に関与しています。

腕を下げた状態では負担が少ないですが、腕組み動作(肩の内転・内旋)で腱が牽引され、炎症部位が刺激されると痛みが発生します。

🔹 関連する状態

  • スポーツや重いものを持つ動作の繰り返し
  • 猫背などの姿勢不良

3. 肩甲上腕リズムの乱れ(肩関節の動きの協調性低下)

▶ 発生メカニズム

通常、腕を動かす際には、肩甲骨と上腕骨が協調して動きます(肩甲上腕リズム)。

筋バランスが崩れると、肩関節が適切に動かず、関節の負担が増加し、痛みや「外れそうな感覚」を引き起こすと考えます。

特に、腕を内転・内旋させる際に肩甲骨の可動性が悪いと、肩の前方構造に負荷が集中します。

🔹 関連する状態

  • 肩甲骨の可動性低下(巻き肩・肩こりなど)
  • 棘下筋や小円筋の筋力低下

4. 肩関節唇損傷(SLAP損傷)

▶ 発生メカニズム

関節唇は、肩関節の安定性を保つ軟骨構造で、腕の動きによるストレスを受けやすい。

過去に肩を強打したり、スポーツで肩を酷使した場合、関節唇が損傷していると、腕組み動作で「引っかかる感覚」や痛みを感じる。

「肩が外れそうな感覚」も、関節唇の損傷によって関節の安定性が低下している可能性を示唆。

🔹 関連する状態

  • 野球・バレー・テニスなどのオーバーヘッドスポーツ歴
  • 転倒による肩の衝撃

まとめ

腕組み時の肩の痛みと外れそうな感覚の原因としては、以下の可能性が考えられます。

  1. 肩関節の不安定性(関節弛緩・亜脱臼) → ルーズショルダーの人に多い
  2. 上腕二頭筋長頭腱炎 → 腕の使いすぎ・猫背・肩の前面の炎症
  3. 肩甲上腕リズムの乱れ → 肩甲骨の動きが悪く、負担が偏る
  4. 肩関節唇損傷(SLAP損傷) → 過去の怪我やスポーツ歴が影響

🔹 早期にチェックすべきポイント
肩の前面や奥に痛みがあるか(腱炎・関節唇損傷の可能性)
動かしたときに「引っかかり感」があるか(関節唇損傷の可能性)
脱臼や亜脱臼の既往歴があるか(関節の不安定性)
姿勢が悪い・肩甲骨が動きにくいか(肩甲上腕リズムの乱れ)

 

早めに適切なケアや検査を受けることで、悪化を防げると思います。

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